ばいぶばいぶる〜vol.4 「セルフプレジャーする女は『寂しい女』?」〜
ばいぶばいぶる〜vol.4 「セルフプレジャーする女は『寂しい女』?」〜
セックストイに本気で向き合う、LOVE PIECE CLUBの人気スタッフTとSが語る「ばいぶばいぶる」。
バイブのリアルなレビューから、性・生理・フェムケア・女の人生まで…。
自分の体を取り戻し、自由を手に入れるための一冊――。それが「ばいぶばいぶる」です。
こんにちは、スタッフSです。第四回ばいぶばいぶる、二度目のS回はセルフプレジャーする女って「寂しい女」って思ってない?否!!ということについて語ります。
そもそも、「セルフプレジャー」という言葉をどれほどの女性が知っているでしょうか。この言葉に出会うまで、「セルフプレジャー」を何という言葉で認識していましたか?「マスタベーション」「オナニー」「一人遊び」などなど、口にするにはあまりに気まずい、男性が言うような言葉、ポルノに出てくるような言葉ばかり。
男性からこんな質問をされたことがある女性は、少なくないのではないでしょうか。
「一人で"する"ことあるの?」
これ、是と答えれば、「エロい」女認定だったり、「男に求められず欲求不満」な女認定だったり、「性欲が強い」女認定だったり、そんな烙印が押される。この風潮は女性の間でも内面化される。"烙印"を押されたくなくて、セルフプレジャーの話題に口を噤む。性的な女、寂しい女、性欲過多、そんなふうに思われたくない、つまるところ、不本意な形で自分を認識されては困るという感情は、女性なら誰しも当然のことだ。仕方がない。
さて、そもそもなぜ、セルフプレジャー=寂しい、がこれほどまで浸透してしまうのか。それは、オーガズムやセックスが「愛情」と結び付けられていることと関係していると私は考える。
女性向け雑誌の「愛あるSEX」特集。恋愛ドラマでは、好意を持った人間が好意の相手に息するようにキスをして、最終的にはセックス。少女漫画もそうだ。好きな人同士は当たり前にセックス。女性向け漫画やドラマでは「彼氏がいないアラサー婚活女子」はバイブを多数所有していて、セフレが誰も捕まらなかった夜はバイブを使う。
セルフプレジャートイの広告にもよく使われるのが「彼のことを想って」とか「彼とのお別れで」とかそんなフレーズ。まるで、バイブとは男の代わりであり、誰かと繋がっていたいという心の空白や、誰かとの離別による不安を埋めるような行為、セックス代わりの行為にセルフプレジャーが落とし込まれている。まあ、それも一向に構わない。誰がどんな動機でセルフプレジャーをしようが自由だ。だが、それ単体のみが目的としてセルフプレジャーが広まっては、興味があっても始めづらい女性もいる。そして、バイブよりも男を「使う」方が女性として正当な価値があるのだと、男とのセックスに誘導される。
もちろん、誰か好きな人と手を繋ぎたいと思ったり、頭を撫でてもらったら嬉しかったり、隣で眠れたら安心する、そんな感情は確かに女性にあると思う。それは「安心、安全」に基づく感情。私がよくオーガズムに関して説明するのは、心身をリラックスさせるホルモンが分泌されるからよく眠れるよ、ということだ。そのリラックスや「安心安全」には、強烈に誰かを求める思いや、性的に客体化されることは含まれない。私は今最高に一人の空間を占領していて、誰からも邪魔されることない自由時間、何者にも干渉されず自分一人で過ごしているのだ、という万能感というか、働いていたり社会に出ているとなかなか得られない、「完全に一人の時間」を実感できて、それが休息になる。これは私の場合は、の話だが、セルフプレジャーはそんな側面を持つ。
だからといって寂しくないなんてことは全くない。いつも孤独を感じていて、誰かにそばにいてほしいとも思う。だけどそれは、セックスじゃない、オーガズムでもない。友達と一緒にご飯を食べたり、映画を観たり、カラオケに行ったり、そういうことで満たされる。私にとっての愛着が、「これ以上触れ合いたい」ではないから。かつては、仲の良さと身体接触は比例すると思っていた。なんならバイブなんて持とうものなら男がいない女、「なんか負けた」ような気がしていたから、「彼氏が買ってきたから仕方なく笑」のバイブしか持ってなかった。全く興味がなかったわけではなかったのに。
彼氏と性行為がなかったら不安になった。18歳という、まだ10代の頃でさえ。性的価値のない女には価値がないと思い込まされていた。また、自分はかわいくないから、せめて性的価値がないと誰とも繋がっていられないとも思った。今なら寂しい時は女友達と集まるけれど、かつては男性を呼び出してお酒を飲んでホテルに行った。でも、誰も捕まらなかったら代わりにバイブ使おう、ともならなかった。それは、誰かと繋がりたいという寂しさはオーガズム、ましてセックスで満たせるものではないと心の底では理解していたから。
ラブピTikTokで、スタッフTと「バイブのいいところ(←観てね)」回を開催したことがあったのだけど、私は男性とのセックスに生じるリスクがバイブでは発生しないという点を主に挙げている。
バイブを使う寂しい女、男に相手してもらえないひと、って思われたくないからバイブは買っちゃダメだ!と男性の元に向かわされる女性へ、そもそも男性とのセックスにはリスクがあるから、バイブを選ぶことは寂しいことなんかじゃなくむしろ英断だと知ってほしい。
男性がこの世に蔓延らせた価値観に、口車に乗せられることなく、性で傷つけられることなく女性に生きてもらうためにラブピのバイブがある。バイブを使って自分だけの安心安全空間としての身体を実感して、心が孤独で心細い時は、ラブピという「クラブ」がある。サロンも、このブログもそんな役割を果たせるといいなと思う。
思えば、本当は、セックスを最初から好きじゃなかった。私はただ誰かと一緒にご飯を食べて、手を繋いで寝られたらよかったんだけど、参加者全員サービスのような形でセックスが付いてきたのだ。寂しさを埋めるのは腟挿入でもオーガズムでもない、安心して安全に誰かと過ごす時間。その「誰か」は男性だとセックスが付録で付いて来がちだから、女性がいいな、というのが私のここ数年の結論だ。
なんで今回こういう内容を書いたかというと、ラフォーレ店頭時代、若い女の子から「彼氏と性行為が出来ないことで嫌われたくない」と性交痛の相談をされることが本当に多かったから。また、その子たちとはまた別ベクトルで、バイブを見て「こんなのいらないよ〜」と言う女性も多かったから。でも、彼女たちは後日一人で、バイブを見に来る。男性に、バイブなんていらない、セックスがあるから、と言わされる女性たち、セックス出来ない女は嫌われる、そんな風に思い込まされる女性たちの気持ちがすごくわかるから。しかしオーガズムは自分一人の身体に起こる現象であり、誰かと共有しなくてもいいものだしセックスって結局しないに越したことはない。みんな普段は言わないだけで、男性とのセックスの悪口が溜まってる女性はすごく多い。
身体、腟、オーガズム、プライベートゾーンを愛情の代替物として思わされて男性に差し出す女性が、身体とはただ自分の身体であるという実感を得るために、女は全員バイブを使った方がいいと強く推奨します。それも、女性が作った、ラブピのバイブを!「寂しい」とは逆の、女の善意、繋がり、安心安全を感じることができます。
TEXT/スタッフS