イベントレポート・「パリの女はバイブを持っている」
イベントレポート・「パリの女はバイブを持っている」
春の気配が感じられる3月下旬の夜、フランス発のプレジャートイブランド「PUISSANTE(ピュイサント)」と、ラブピースクラブ代表・北原みのりさんによる特別なトークイベントが開催されました。
本イベントでは、PUISSANTEアジア統括マネージャー・ジャンヌさんをお迎えし、フランスの性事情からバイブ開発の裏話まで、たっぷりと語っていただきました。
●ご挨拶
ラブピ代表の北原は「これまでのセックストイは、ほとんどが男性目線のものばかりだったんです」と語る北原。
愛と性のイメージがあるフランスにも実はプレジャートイブランドがなく、2019年にフランス発のブランド・PUISSANTEと出会ったときの驚きは大きかったと、PUISSANTEとの出会いを話します。
また、昨年のイベントで、実はフランスでも“性”について自信を持って話せる文化ではなかったことを話しました。
そして、「ちょっとシャイなんですけど……」と笑顔で話し始めたジャンヌさん。
PUISSANTEとの出会いは、設立者が大学時代の同級生だったことがきっかけ。それまでは自身の性について意識したことがなかったと語るジャンヌさんですが、このプロジェクトに共感し参加しました。
アジアを統括する立場として、さまざまな国の女性たちと出会い、さらに自分自身の意識も大きく変わったそうです。
また、自分の姉妹や母など女性の家族とも、もっと性に対して自由に話せるようになったのが収穫だったそうです。
●セクシュアリティに関するフランスの大規模調査
イベントでは、PUISSANTEが注目したフランス政府の調査結果も紹介されました。
18歳から89歳を対象にした3万人規模のこの調査では、初体験の年齢からマスターベーションの経験、性生活の満足度まで、幅広いテーマがカバーされています。
この調査は女性と男性両方のセクシュアリティについて調査しているのが面白いポイントです。
男女の初体験の平均年齢や障害におけるパートナーの数を調査しています。初体験の平均年齢は18歳、生涯におけるパートナーの数は男女ともに1992年~2023年の間で増えているとのこと。
女性のみの調査(1992年、2006年、2023年)では、興味深い結果が。
・生涯における性行為の種類
女性のセルフプレジャーは42%(92年)→56%(06年)→72%(23年)と増えている結果に。
また、別の調査では人生で少なくとも1回はバイブを使用したことがあるか、について半数が1度は使ったことがあると回答しているとのこと!
・過去1年以内でセックスをしたか
2023年は8割近い人がセックスしており、69歳までを入れると7割の人がセックスをしていました。
面白いポイントは1992年と2006年、2023年では、一番古い記録と比べると83%がセックスをしていたのに比べて、2023年では過去1年以内にセックスをしている人が減っていますが、同じ調査で「いまの性生活に満足している」に対しての答えは「満足している」「非情に満足している」が大半だったことです。
性生活への追及は高年齢になってもやめるわけではないという面白いデータでした。
印象的だったのは、「セックスの頻度は減っているのに、セルフプレジャーは増えている」というデータ。
ジャンヌさんは「人々の自分自身のセクシャルウェルネスへの関心は高まっていると思う」とコメント。
北原さんも「この規模で調査しているのが本当にすごい!」と驚きと感心が混じります。
(出典:https://presse.inserm.fr/wp-content/uploads/2024/11/rapp_CSF_web.pdf)
●フランスの性事情と女性のプレジャー
性や恋愛に対して自由なイメージがあるフランスですが、公の場でセクシュアリティを語るのは“恥ずかしい”という空気が根強く、そこには宗教的背景や家父長的な考えも影響しているのではという話に。
ジャンヌさん曰く、パートナーとのセックスと、女性のセクシュアリティは別物として考えられており、その考え方はこれから変えていく必要がありそうだとのこと。
それを受け、北原はこれまでの活動の中で感じてきたことを語りました。
「フランスはアムールの国ですからセックスは愛のある行為、プレジャーは個人的な行為である危機感があるのではないでしょうか。日本で活動していても、「(バイブを使ったら)男性いらなくなりますか?」が一番聞かれてきた質問です。女性の性は男性ありきのものとなっています。性を楽しむこととセックスをしたい気持ちは関係ないはずです。自分のためのセルフプレジャーという考え方があってもいいんじゃないかなと思います」
最近では、ポップで可愛らしいパッケージのトイが登場し、販売店も明るくカジュアルな雰囲気に変化しています。
「オシャレでかわいく、飾っておきたくなるようなデザイン」を目指したPUISSANTEのバイブは、まさにその象徴と言えるでしょう。
●なぜ、PUISSANTEは生まれたのか
PUISSANTEの創立者であるマリーは「セックスアンドシティ」を見たことがきっかけでプレジャートイが気になり、実際に使用し、その感動を友人に話したところ、非常に困惑されたとのこと。そのときにこういった性の話は普通ではないと痛感させられました。
男性は当たり前のように語られるのに、女性のマスターベーションはこんなにおかしい目で見られるのか疑問を持ちました。
セルフプレジャーは自分の体を知ること、体を触ることは、恥も罪悪感もないことを伝えたいと思ったことが設立のきっかけです。
バイブを使って得られるものは快感だけではなく、自分の体に触れて心身ともに満たされることが大切で、自分自身の感覚を知ることでパートナーにも伝えられるようになると、ジャンヌも語ります。
PUISSANTEのトイは、その見せ方がほかのブランドにはないほど、とってもオシャレ。
特に少しビンテージライクな部分があり、通りいっぺんのオシャレではない、フレンチらしいこだわりが感じられるブランドです。
モットーは「食べて、飲んで、マスターベーション」、パッケージにもいつも印字されている言葉です。
「食べる」「飲む」はフランスの真髄、そこにセルフプレジャーが入ることを祈って作られたスローガンなんです。
●「自分の体を知る」ことの大切さ
ジャンヌさんが特に伝えたかったのは、「セルフプレジャーは快感だけでなく、自分の体を知ることにつながる」という点。「自分の感覚を知れば、パートナーとの関係もより良いものになる」という言葉には、会場から深くうなずく方も多数ありました。
代表的なトイであるCocoやChouchou、Le Bisouなどの特徴やデザインに込めた思いが語られるたび、来場者の関心も高まりました。実際にトイを触っていただくことで、伝わったものもあったかと思います。
北原も「クリトリスの全貌が医学的に分かったのはごく最近。だからこそ、“誰でも使えて、誰でも気持ちよくなれる”というデザインが大切」と語ります。
参加者の方に実物のトイを触っていただきながら、アイテムについてもお話いただきました。
PUISSANTEがはじめて作ったトイです。どんな人の体にもあわせられてどんな人も快感を得られるものを作りたいという思いで作られました。
なぜそんなデザインにしたのかというと、女性の85%はクリトリスの刺激がないとオーガズムに達せられないというデータがあるから。外からも中からも刺激を与えられるトイとして作られました。
腟に入れて楽しむときにもっと深い快感、強い快感を感じたいときのために作られました。モーターがそれぞれ違います。ラブピのすべてのトイと違うのは、全てオブジェのようにかわいく飾れることを重視しているところ。
シュシュはニックネーム、特に意味はないのですが、「私のお気に入り」という意味あいがあります。
北原は「ラビットバイブの発祥は日本。名前はアメリカからかもしれません。日本のラビットトイはおじいさんと熊が彫られている、民芸品みたいな時代がありました。アメリカはウサギ耳のように作っていて、二股のバイブが一番人気です」と、ラビットバイブの歴史を話します。
「あなたのクリトリスにフレンチキス」という意味の電マタイプのバイブです。
ボールが大きいのは、細かい部分だけでなく腟の入り口全体も大きく刺激するため。足で挟んで楽しむこともできます。「首のマッサージにもおすすめ!」とジャンヌは笑って話しました。
Cocoの妹分のようなトイで、Cocoの吸引部分だけを楽しめるトイです。
外部刺激用のトイで、クリトリスや細かい部分に当てることができます。ソフトに肌なぞることで快感が得られる設計です。
バイブを使うときの必須アイテムについて北原は、「バイブを使うときはローションを使ったほうがいいです。腟は傷つきやすいので、ローションを使うことで腟を守りながらトイを使えます。科学的なものを使うと腟が乾いてしまったりするので自然でナチュラルなものを使うのがおすすめ。また、バイブはしっかり洗いましょう!」と、PUISSANTEにはクリーナーも揃っていることを紹介しました。
またジャンヌはこれからのPUISSANTEについて、「これからは全ての女性のライフステージに寄り添った商品を作っていこうと考えています」と話しました。
まずは骨盤底筋トレーニングボールがローンチ予定。出産によって酷使された体のケアやセックスの感度を高めるために使えて、尿漏れ対策もできるアイテムです。
また、フェムゾーンを保湿するバームも発売予定のPUISSANTE。北原は「バイブだけでなく、プレジャーを守るためにはほかのものも必要です。女性の体を知る必要性があります。ヴァギナの保湿が出てきたのも最近のこと。こういうアイテムがフランスから出てきたのが嬉しい。トータルのセクシャルヘルスをやっていくんだなと思います」と喜びを語りました。
●フランスでのクラウドファンディングとグローバル展開
PUISSANTEが誕生したきっかけはクラウドファンディング。
創立者のマリーははじめ、人々がどう反応するかわからなかったが、クラウドファンディングはすぐに大成功を収め、その後、女性のためのセクシュアル・ウェルネスについて語るというピュイサンテのミッションが必要であるとさらに確信したといいます。
「当初はとても不安だったけど、“ウェルネス”という言葉を入口にしたことで若い世代からの支持を得られた」と振り返るジャンヌさん。
現在ではフランスを中心に、ヨーロッパ、そして日本、韓国、台湾、香港などアジアでも展開しています。
●おわりに
「フランスも自由なわけじゃない。だからこそ共感できる部分がたくさんあるんです」と北原。
「日本のバイブは男性目線の"エロさ"が優先されています。ですが、開けた瞬間、自分の尊厳が守られていると感じられることが大切で、それがパッケージに込められていると思います」という言葉には、会場全体があたたかい共感に包まれました。
ジャンヌさんも最後に、「私のような若い女性の話を聞いてくれて嬉しい。今夜はみなさんにインスパイアされました」と笑顔で挨拶。
フランスと日本、全く違う文化のようで、女性たちのおかれる状況には共感できる部分も多くあります。
PUISSANTEのプレジャートイは、私たち日本人にもとても共感できる感覚の中で作られていることがわかりました。
「食べて、飲んで、セルフプレジャー」——そんな言葉がぴったりの、自由で楽しく、そしてとても有意義な夜となりました。
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