生理用品で未来が変わる 〜生理を巡る女の物語〜
生理用品で未来が変わる 〜生理を巡る女の物語〜
未来の話をする前に、まずは最初に昔話を・・・
むかしむかし、とはいっても30年くらい前の昔、あるところに、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」がポツンと誕生しました。その国では、それまでも男による男のための「大人のオモチャ屋」というものはあったそうですが、女だけで運営する女のためのそういうお店は初めてだったそうです。
そこでは、女の厳しい目で選び抜かれたバイブが売られていたのですが、実は売られていたのはバイブだけではなく、当時はとても珍しかった月経カップや、布ナプキンなども売られていました。なぜ? それは、女の身体に関わる仕事をするなら、プレジャーだけじゃなく生理用品も大切! とラブピースクラブをはじめた女が真剣に考えたからなのでした・・・。
・・・というわけで、今回は生理用品の話です。
実はラブピースクラブは、日本で初めての女性のための女性によるバイブ屋というだけでなく、日本で初めて月経カップを紹介したお店でもあります。
写真は、ラブピースクラブが最初に売り出した「Keeper」という月経カップです。
天然ゴムで創られていていずれは土に返るエコなカップです。天然ゴムなのでアレルギーがある人は使えず、また見た目が少し・・・トイレの吸引カップにちょっと似ているせいか、なかなか一般には広がりませんでした。(今は販売していませんが、ラブピースクラブのショールームに展示しています)
その後、シリコン素材の月経カップ「DIVA CUP」や「MOON CUP」がアメリカやカナダで発売されるようになり、ラブピースクラブも取り扱いをはじめました。ただ当時は月経カップを生理用品として申請することはできず(法律の壁が厚く高く、使い捨てタンポンとナプキンしか生理用品として認められませんでした)、雑貨として紹介していました。
そんなある日・・・
漫画家の内田春菊さんがラブピースクラブに来てくださり、当時販売していたシリコン製月経カップ「ディーバカップ」を使って『私たちは繁殖している』で紹介して下さったのです。
月経カップがどれだけ女性たちの生活を変えるか! どれほど便利なのか! という視点で書かれた春菊さんの漫画によって、一気に、本当に驚くほど一気に月経カップの存在は広がっていきました。しかも、春菊さん、「私たちは繁殖している」8巻(2008年)の表紙で月経カップを描いて下さっています。
改めて「私たちは繁殖している」8巻の表紙を見ると、血がなみなみ入った月経カップを持つ春菊さんを、二人の娘が憧れの目で見上げている様子に、胸が熱くなります。女の子たちが生理をやっかいなもの、という風に捉えるのではなく、「生理=憧れの大人になる」というような、女性の身体を全肯定する、という力強さと愛が感じられるからかもしれません。
春菊さんは当時40代中盤でした。
中年世代の女性たちに月経カップを紹介すると、「もうすぐ終わるから今さらいいわ」という女性は少なくないのですが、春菊さんはそういう風には捉えない。その感覚に強く勇気づけられたものです。快適さを求め身体を知っていく。それはたとえ生理があと数えるほどしかないかも・・・という時であっても、大切な姿勢だと気が付かされたのです。
【なぜ、生理用品が大切なのか】
日本で使い捨てのナプキンがつくられたのは1961年です。坂井泰子という20代の女性のアイディアが日本の生理文化をあっという間に変えました。
実はそれまでも女性たちは、「生理用品」を「使い捨て」していました。薄用紙を何枚も重ねたようなものを生理の度につくるなどして、工夫したそうです。薬局には生理の時に使う薄用紙がふつうに売られていた時代です。とはいっても、「生理用品」として商品として販売されるのは、1961年まで、待たなければなりませんでした。「何でも売れ、カネになるものな何でも売れ!」という社会であっても、生理用品に目を向ける企業はなかったのです。
日本で初めての使い捨てナプキンは「アンネ」と名付けられました。
【生理用品の冒険をしよう!】
アンネナプキンの登場から60年。
今、生理用品は本当に様々な選択肢が増えました。
まずは「色々どんどん試してみる!」ことをオススメします。
月経カップを「どんどん試す」のは経済的に難しいかもしれません。それでも生理用品には、徹底的にこだわり、自分に最適なものを探し見つける価値があります。60年前に女性たちが使い捨てナプキンで解放されたように、快適な生理用品には、私たちの人生を変える力があるからです。
そこで提案です!
アンネナプキンに感謝と敬意を示しつつ、使い捨てナプキンを第二の選択肢にしませんか?
使い捨てナプキンも日々進化していますが、使い捨てナプキンはやっぱり使い捨てナプキン・・・。今は60年前と違ってポリマーが入っていて、使い捨てオムツと同様に大容量吸収できるようになりましたが、それは本当の意味での「快適さ」とは違うものかもしれません。
使い捨てナプキンを選ぶ理由の多くは「漏らしたくないから」。だから大きな夜用を昼間からつけていたり。大容量吸収できるというオムツを選択する人は少なくありません。大は小を兼ねる、という選択をする人が増えているようです。
でも、たくさん吸収できることは、本当の意味で快適と言えるのでしょうか?
使い捨てナプキンを使用する女性の中には、外性器の痒みや蒸れや匂いに悩まされている人が少なくありません。使い捨てナプキンだとトイレに行く回数がふだんの数倍増え、使い捨てナプキンを処理するにも労力を取られます。またポリマーが入った分だけ大容量を吸収できますが、ポリマーはオムツと同じで、吸収すればするほどずしりと重くなりシンプルに少し邪魔だったりしますよね。
「使い捨てナプキンでかぶれたこともないし、何も困っていない」という女性もたくさんいますが、それでも月経カップや吸水ショーツなど、女性たちが開発する最新の生理用品を使うことで、少しだけ違う未来が拓けてくるかもしれません。
どれだけ快適に過ごせるか、どれだけ自由になるか、そういう視点で生理用品を改めて選び直してみませんか?
ちなみに日本ではじめて正式に月経カップが認可されたのは2016年です。スクーンカップを扱う大阪の会社(女性の社長です)が粘り強く申請し、ついに日本でも月経カップが様々なマーケットで販売されるようになったのです。ありがとう、スクーンカップ!!
ラブピでもコチラで販売しています!
【吸水ショーツの誕生!】
2017年、ラブピースクラブは台湾製の吸水ショーツ「ムーンパンツ」を販売しました。これが予想外に大ヒットをしました。多くの女性が潜在的に「こういう商品」を求めていたのかもしれません。実際にムーンパンツは「フェムテック」ブームをうみだし、UNIQLOなどの大手が吸水ショーツをつくりはじめるなど、日本の生理用品史を大きく変える出来事になりました。
吸水ショーツと一言にいっても、メーカーによって考え方がまるで違います。
ムーンパンツの考え方はとてもシンプルです。菌を繁殖させない、匂わない、すぐに乾き、清潔で、生理でない日にも使えるパンツ、です。
ムーンパンツは台湾で発明されました。台湾は、世界最高の繊維技術があると言われていて、サッカーのワールドカップのユニフォームの7割は台湾の布で創られているとか。そんな繊維先進国で生まれたムーンパンツは、プロの登山家のためにつくられた繊維で創られています。激しく汗をかくけれど、絶対に身体を冷やさず、すぐに水分を吸収し、菌を繁殖させず、身体に負担のないように軽く薄い高度な技術の布。だからムーンパンツは驚くほど薄く、生理ではない日も日常的にはけるほど快適なのです。特に、今日もしかしたら生理になるかも・・・という日にはムーンパンツ1枚はいているだけで、びっくりするくらい快適な1日になるはずです。
使い捨てず、日常の下着がそのまま生理用品になる。
そんな未来、60年前のアンネナプキンの時代に、誰が想像できたでしょうか?
ムーンパンツは今、生理が始まったばかりの女の子から尿もれに悩んでいる閉経後の女性まで、全ての世代の女性たちに使われています。下着の中が快適だと、こんなに気持ちがいい! そんなことを実感できる下着です。
ムーンパンツはコチラ!
【月経ディスクの誕生!】
今、ラブピースクラブで最も人気があるのが月経ディスクです。ディスクもカップと同様にシリコンでできていて、平均耐久年数は約10年です。経血を空気に触れさせずカップに入れるので菌が繁殖せず匂わないのも月経カップと同じです。
ただ月経カップと違うのは大きくいうと、生理中にも性交を楽しめることです。
生理の時にセックスなんてあり得ない! という声はよく聞きます。医療従事者にも、菌が繁殖するから生理中の性交は控えるようにと言う方もいます。でも、生理の時には性欲を高まるホルモンが放出されることで、プレジャーを楽しみたいと感じる女性もいるのも事実。自分がしたいタイミングで、清潔な環境で安心してプレジャーを楽しみたい、そういう女性にとってディスクは最適な選択になります。
もちろん、プレジャーと無関係にディスクを選択する女性も増えています。
月経カップは膣入り口付近にあるため、うまく装着できていないと違和感を感じたりなどして、練習が必要ですが、ディスクは最初からシンプルに使いこなせる人が多いです。特にカップは真空状態になるため、取り出す時に痛みを感じる人もいるのですが、ディスクは指にひっかけるだけですぐに取り出せるので簡単です。
一方、膣が長い人にとっては、ディスクの脱着は難しいかもしれません。一般的には、中指の第二関節くらいの長さが通常時の膣の長さと考えられています。指を入れた先に触れるコリコリしたものが子宮の入り口です。指を清潔に洗った状態で、ぜひ、自分の膣の長さを測ってみてください。
参考までにタンポンの位置、月経ディスクの位置、月経カップの位置をイラストにしました。
ライフスタイルや気分にあわせて生理用品の組み合わせを考えたりするのも楽しいことです。月経カップしか使わない、吸水ショーツしか使わない、と決めつけず、様々に組み合わせて生理を乗り切りましょう。
登山をする時の生理用品、水泳する時の生理用品、1日図書館で過ごすときの生理用品、長時間飛行機に乗るときの生理用品、職場でずっと座っている(または立っている)日の生理用品、家でだらだらする時の生理用品・・・シチュエーションで選ぶ生理用品は違うはずです。
今日のあなたは、どんな生理用品を選びますか?
【生理と女性の人生、もっと語っていこう!】
女性の身体を生きるということは、生理のある人生を送るということです。無月経症に苦しんだり、ホルモン治療などで月経を終わらせざるを得ない体験をする女性も含めて、月経は女性の心と人生と深く関わります。だからこそ、この社会が月経をどのように捉えるか、そして女性たちがどのように月経時を過ごすか・・・は女性の人生にとって、とても大切なのです。
また、子供を産む選択をしない女性が増え、医療の進歩によって平均寿命が80代を超えている時代、生涯の月経回数が増えています。明治時代の平均寿命は30代半です。5人以上出産し、更年期を迎える前に亡くなる女性が多かったのです。それもたった100年ほど前のこと。
そういう意味で私たちは人類史上はじめて、「閉経後」の人生の方が長くなるかもしれない時代を生きています。そして人類史上はじめて、多くの女たちが400回以上の月経を経験するという時代を生きています。
だからこそ、月経の過ごし方が大切で、だからこそ、月経用品の質が問われるのです。
ラブピースクラブではこれからも生理用品の情報をどんどんアップデートしていきます。
特に障害をもつ女性、生理介助が必要な女性にとって、どのような生理用品がベストなのかということは、まだまだ語り尽くされていません。今も障害を持つ女性の多くがオムツを使用していますが、オムツを使用することで皮膚のかぶれや痒みは決して見過ごせない深刻な問題です。
全ての女性が快適に過ごせる生理用品は「1つ」ではないでしょう。だからこそ、女性たちが声をあげて、「こういう生理用品がほしい」「こういう生理ライフを送りたい」と知恵を出し合っていくことが大切なのです。
そう、女性たち自身が生理の話をもっと率直に自由に話していきましょう!
日本で初めて女性が開発した月経カップ「マーモ」のサイトでは、女性たちの生理ライフストーリーが掲載されています。ラブピースクラブ代表北原みのりもインタビューを受けています。ぜひ読んでください。インタビューはコチラから→ https://murmo.jp/blogs/journal/vol-032
マーモの月経カップは、初めての月経カップとしてどういうものが良いのか・・・が考え尽くされた素晴らしいカップです。マーモの月経カップはコチラで購入できます。
生理についての物語、いかがでしたか?
生理についてもっと深く知りたい、生理用品について知りたい、生理のことをもっと考えたいという方には以下の本もオススメです。
「生理用品の社会史」田中ひかる
日本の生理用品の歴史を追いながら、生理用品の社会的な位置づけや、女性の歴史が浮き彫りになる大変濃厚な一冊です。
「生理を、仕事にする。」アジュマブックス
台湾で起きた「生理革命」。生理の権利を訴えた女性たちによるドキュメンタリーです。ラブピースクラブ代表の北原みのりが日本の生理用品の近代史について解説を記しています。
「こんにちは!生理」集英社
オーストラリアの作家と医師によるベストセラー。生理が始まる女の子たち、同世代の男の子たちに向けた性教育本です。
みなさんの生理ライフがより快適で、より自由で、心地よいものなりますように。
ラブピースクラブの生理用品はコチラからご覧いただけます。
おまけ・・・生理用品の100年の歴史年表です。
生理がなければ人類は発展せず、女は血を流しながら生きてきました。
偉大なる生理の物語。そして新しい次なる生理の歴史をつくるのは、私たちなのです。
ということで、むかしむかしの生理用品のお話しは、おしまい。
この続きはみんなで語りあっていきましょう♡